寿陵という名の生前墓
本人がご存命のうちに、本人の意思で行われる「生前葬」や「お別れ会」、また「寿陵」や「生前墓」について、少し書いてみたいと思います。
さて、まずは生前葬ですが、歴史が浅いものだと思っている方も多いのではないかと思いますが、実はかなり歴史が深く、平安時代から行われている葬儀方法の1つです。
けっして現代の流行で生み出された葬儀ではなく、昔から伝わる伝統のある葬儀様式の1つなのです。
著名人であった女優の故水の江瀧子さんや、天才漫画家の故赤塚不二夫さんも、生前葬で葬儀を執り行いました。
「生前葬」そのものの認知度は高いのですが、身近で実際に行う人をあまり目にすることがありませんでした。
それが近年、一般の方でも自分の葬儀を「生前葬」として行いたい、自分が存命のうちに墓を建てたい、という方が徐々にではありますが、増えてきているようです。
ご自分が「生前葬」として行う理由は本当に様々です。
「生きているうちに、お世話になった人にお礼をいいたい。」
「感謝の気持ちを込めて招きたい。」
「自分の意思と責任で葬儀を行い、自分の葬儀を見届けたい」
「親しい友人や、疎遠になっている人にも元気なうちに直接会いたい」
「病などで命が限られている場合、直接あってお礼を言いたい」
「高齢になることで、病気や体力的な理由から自分の葬儀に出席できない人が増えると予想し、生前葬を行い、沢山の人に参加してもらいたい」などです。
また、将来の家族への負担を少しでも軽減させてあげたい、という理由も多いようです。
生前葬には多くのメリットがあり、楽しい時間を過ごし、余生を楽しく過ごすことが出きる唯一の葬儀方法だといえます。
通常の葬儀とは違い、カラオケ大会やパーティなど華やかなものが多いです。
生前葬の式次第は、自分で様々なプランを立てることができます。
しかも内容は自由に決められます。
式全般の流れとしては以下のような形式が多いようです。
・参開式の言葉を司会者が進行します。
・主催者(本人)が生前葬開催の経緯などを含めて、皆様へ挨拶をします。
・これまでの人生を振り返り、ビデオやスライドショーなどで、人生を振り返り共有してもらいます。
・来賓の挨拶を招待客の中からしてもらいます。
・友人のスピーチなどをしてもらい、会食や歓談に入ります。
・そして、閉式の言葉を司会が進行し、参加者の方々をお見送りをします。
また、生前葬が徐々に浸透するにつれ、とあるものの売上げが伸びています。
それは、墓地です。
これは「寿陵」といわれる墓地のことで、生前に建てる墓のことをいいます。
墓石に赤い文字で名前が切付られているものが「生前墓」です。
生前墓を建立される方は、生前葬と同じ理由で、「家族や親族に手間をかけさせたくない、お金の面で迷惑をかけたくない」、「事前に自分の好きな場所を選ぶことができる」などの理由が多いようです。
事前にお墓を作ることで自分の好きなデザインを施すことが出来る為、人気が高いです。
また、意外と知られていない事ですが、お墓は非課税で相続税がかからないというメリットもあります。
しかし、なかには寿陵を受け付けていない霊園や寺院墓地もあるらしいので、事前に調査が必要です。
生前にお墓を建てるのはイメージとして、少し違和感を覚える方もおられるかと思いますが、死を意識することで長生きができ、縁起がいいとも言われています。
メディアで取り上げられることが増えたこともきっかけの1つですが、少子高齢化社会、核家族化により、自分の死についても真剣に考える人が増えているという証拠です。
そして「生前葬」や「寿陵」の最大のメリットは、すべて自分自身でプロデュース出来る、ということです。
自分の趣味を主とした式次第や、今まで疎遠になっていた友人に会えるなど、様々なメリットがあります。
したがって、明るい生前葬をすることで、思い残すことなく余生を楽しく過ごすことが出来、必ずやってくる自分の死に対して、少しでも前向きにとらえることができるのです。
人間とって【死ぬ】ということは、恐ろしいことで目をそむけたくなります。
しかし、この世に生をうけてきたからこそ、死を迎えなければなりません。
人は必ず死にます。
恐ろしいと感じてしまう死に対して向き合い、前向きに真摯に死を捉えることができるのが、「生前葬」であり「寿陵」なのです。