「池上本門寺 千部会」がはじまります
さて、きたる4月28日は、日蓮聖人が初めて御題目(南無妙法蓮華経)をお唱えになられた、立教開宗の御聖日です。
日蓮聖人、32歳の春。
建長5年(1253年)4月28日の早朝、まだ蓮長と名乗っていた聖人は、清澄山旭ヶ森の一角に立ち、太平洋から暁闇を破って輝き出る太陽に向かって、大音声で、
「南無妙法蓮華経」
とお題目を10回、口に唱えることを初めて行いました。
改めて身を清めた聖人が向かった場所が、清澄寺の師の持仏堂の南面。
少数の人を相手に、その信念を説き始めました。
「これを申さば必ず日蓮の命となるべしと存知せしかども、虚空蔵菩薩の御恩を報ぜんが為」の、様々な迫害や法難を覚悟のうえで、立教開宗なさったのです。
千部会は、こうして始まります。
バチと腕が垂直に天を指す独特の叩き方で太鼓が鳴らされます。
すると、七条袈裟をまとった70人の僧侶が入堂してきます。
美しい天蓋と五色の布が巡らされた本堂には荘厳なお経が響き渡ります。
そもそも千部会は、天平20年(7489に聖武天皇が先帝の崩御に際し、「法華経を千部、写経して供養した」と「続日本書紀」にも記録されています。
また、「千部会」とは、「法華経」一部を千部(千回分)読誦することを意味しますが、現在は参拝者を含めて大勢でお経を読み、お題目を唱える法要として行われています。
「池上本門寺 千部会」は、4月27日、28日、29日の三日間行われます。
また、「お会式」で冬用の絹の御衣をお召しになっていた御本尊は、28日に、夏用の朝の御衣にお召し返されます。
ただ残念ながら、この衣替えの様子は許された人にしか見ることが出来ず、一般公開はされていません。
大堂中央のお厨子の扉が閉ざされ、横から大勢の僧侶が聖人御尊像のお衣替えをします。
その間も、休むことなく誦経の声が続きます。
そして、最終日の29日は、かわいらしいお化粧を施され、着飾った子供たちの「お稚児さん練行列」も行われます。
すべては、お題目を唱えながら開宗の心を伝え続けていく、古の伝統行事なのです。