お彼岸と猫柳
皆さんは、お彼岸にお墓にお供えするお花は何を選びますか?
お花屋さんで菊の花をメインにしたお仏壇に飾るようなお花でしょうか。
でも、元々、野花を取ってきて「花屋」として売り買いが始まったのが江戸時代ですので、元々は、お彼岸のお花は、自分できれいなお花を摘んできて手向けたことから始まるのです。
今は、花屋さんだけでなく、八百屋さんや産直にも、それぞれに美しいお花が並んでいます。
選び放題です。
だからといって、そのようなお花ではなく、定番の組み合わせと言える、お彼岸花(曼殊沙華ではなく)があります。
それは、キンセンカと猫柳です。
これは、花農家があえて栽培しなくても、お彼岸の時期になると、河原や山の裾野、自宅の庭などに自然に咲きます。
それを、多くの地方のお年寄りの方々が手内職します。
おばあさんは庭で、キンセンカを摘み、おじいさんは河原で、猫柳を採りといったところでしょうか。
ちょうどよいバランスで二つを合わせ、地域ごとの元締めのところに卸し、元締めが隣近所の注文を取って届ける、なんてことをしていました。
しかし、東日本大震災が過ぎたころから、キンセンカはあるのに、猫柳が店頭から消えました。
キンセンカは、庭で自家製しなくても、キンセンカ農家もあるので市場で仕入れることができます。
でも猫柳に関しては、生け花などで使うかなり上等なもの(高価なもの)は市場で取り扱うこともありますが、お彼岸のお墓にあげるようなものは取り扱ってはいないのです。
その理由は、利益がでないからです。
では、なぜ猫柳が消えたのか。
今までは足や腰が痛い痛いと言いながらも、勤勉なお年寄りが河原や山に採りに行きました(国交省河川局などの所有権の問題はあえてここでは語りません)。
猫柳2本から3本セットで100円で八百屋さんに卸したとしても、春の自分のお小遣いには充分なくらいの金額になるからです。
でも世の中は変わりました。
平成12年から始まった介護保険法で、今までお彼岸のお花を作っていたお年寄りには行くところができました。
デイサービスやデイケア、ショートステイなどです。
お陰で、いまでは忙しくて時間がありません。
そして、その子の世代もまた実業で忙しく、少しの手間賃にしかならない大仕事をしている暇がありません。
画して、河原にも山にも、猫柳が生え放題になっているのです。
所有権を問わなければ、元手は自分の労力だけです。
かかったとしても輪ゴム代だけです。
仏さまに供えるために、猫柳が欲しくて欲しくてしょうがない人たちのために、手をあげて猫柳作りしてくれる人はいませんか。
キンセンカの花言葉は、別れの悲しみ。
猫柳の花言葉は、自由。
つまりお彼岸を機に、悲しみから自由になるという願いも、昔の人は知らずして組み合わせてたのかなと思えます。
猫柳なんとか、お彼岸を飾れないものでしょうか。