ノウゼンカズラ(のうぜんかづら)
この暑い時期、あちらこちらで派手な彩色で人々の目を楽しませてくれるのは、ノウゼンカズラ(のうぜんかづら)です。
花木の少ない時期もあって、比較的花弁も大きめでオレンジ色の花弁が一際に目立ちます。
燦燦と照り付ける太陽に呼応するように咲き乱れている風景は、好き嫌いは別としても真夏の暑い季節に代表的な花と云えると思います。
筆者にとっては、少年期の暑い夏の日の一コマを飾ってくれる思い出深い花木のひとつです。
特に思い出すのは、自宅の玄関から外へ出たときの西側に広がるその風景です。
夏の夕暮れ時、橙色の空に重なるように、このノウゼンカズラが咲き乱れていました。
それは、祖父が植えたものでした。
暦の上では既に秋ですが、まだまだ暑く、ヒグラシの鳴き声と共に、その場面がいまでも心に残っています。
当時、敷地内には多くの樹木が植わっていました。
そのなかで、一際大きくて最も存在感のあった柿ノ木のまわりを、兄弟皆でよく駆け回ったり、木登りをしたり、柿を収穫したりして遊んだものでした。
また、家屋前の椎の木は、高さ2.5mぐらいのところから大きくV時型に幹が分かれているのが特徴で、これまたよく木登りをしたものです。
根元あたりでは、当時の我が家の忠犬ゴローが、その日陰を利用して寝そべって涼んでいました。
ほかにも、藤の木やアセビ、楡、欅など、多くの木々達が季節ごとにたくさんの美しい花や実をつけてくれて、家族を楽しませてくれていました。
そして、敷地の北側一帯には矢竹という笹竹の一種が鬱蒼と茂っており、今思えば本当にここが東京なのかと思うばかりの光景が広がっていました。
改めてこうして振り返ってみると、何物にも替え難い本当に素晴らしい思い出です。
目を閉じると、まるで昨日の事のように一コマ、一コマが鮮明に蘇ります。