お数珠はいつも数珠袋に
さて、冒頭から質問で失礼いたします。
お参りに行く時、お葬式やご法事の時、あなたは、お数珠をどこからだしますか。
だいたいの女性は、そうそうあることではないから仏事用のバッグのなかに剥き出しで入れっぱなしとか。
男性の方だと『数珠どこにやったっけ?』と探したりしませんか。
ですが、お数珠は実は、数珠袋と一体なんです。
なぜなら、お数珠も数珠袋も『座具』の一つであり、お数珠のみを机や畳の下に直置きしないのがしきたりなのです。
収納のためだけでなく、お数珠を置くときのお座布団のかわりになるのが、数珠袋なのです。
これは、私たち日本人のもつ美しい所作のひとつです。
数珠袋の布は、イメージとしては西陣織が一番ですが、ちりめんなど正絹でできたものが主です。
また、木綿でも上等な布を使っている場合も多いです。
昔は和服を着て、人は暮らしていましたね。
時に上等な着物を誂えた時、ちょうど数珠袋を作る程度の布はあまるように織られています。
自分がこのような着物を着られるのは、仏様のおかげとして、その布で数珠袋を作りました。
少し派手な柄がお好みの方は、帯の余り布(西陣織)。
一般的には、正絹のちりめん。
一般庶民は木綿の上等な布、といったように身の丈にあった布で数珠袋を作りました。
こうした数珠袋は、お裁縫をしていれば、自宅で手作りできます。
その作り方も、数寄屋袋型や半月型、財布型やふくさ調など。
そう、数珠だけでなく、ご香典袋なども入れられるようになっていました。
お財布状に折った形でなく、巾着(きんちゃく)の数珠袋もあります。
今はペンですが、昔は携帯用の筆と墨汁を入れたものも入るようになっていましたから、今よりは大きいサイズだったかと思われます。
池上本門寺 花峰では、数珠袋をたくさん取り揃えております。
ちょっとシックで上品、だけど、素朴なデザインが多いです。
一見、豪華絢爛に見えるものよりも、手に取った時に布の上等さがわかるものが長く使えるものだと考えます。
また、日々身に纏う衣服などでも、本当に粋な人は、内布(裏地)にこだわる、とよくいわれます。
お数珠を大切にする気持ちは、数珠袋にも持ちたいものです。
お数珠はいつも数珠袋に入れていること、すなわちそれは心の整理整頓につながるものでしょう。