旧盆について~とある東北地方のお話

旧盆とは、暦の上、カレンダーで言えば今年は、9月3日から6日を差すのです。

しかし現実においては、1か月遅れの8月13日から16日を差します。

大体のお寺において、8月10日前後に檀家信徒一同が菩提寺に集められ供養会が行われます。

その際、塔婆供養として、その家の姓が書かれた塔婆を渡されます。

供養会自体が、現代においては自由参加となっておりますので、塔婆は位牌堂などに保存されます。

供養会に参加した者は帰りに、参加していないものは位牌堂の鍵が閉まる時間までに塔婆を頂きにあがります(もちろん、遠方の方で来れない方は、位牌堂にずっとあります)。

その塔婆を一旦自宅に持ち帰り、仏壇の前に安置します。

そして、13日の朝に、その塔婆を各家のお墓に持参し、塔婆立てに立て、お参りをし、ご先祖さまを連れて帰ります(お盆のお迎えと言います)。

場所や地域によっては、12日の夜に松明を掲げ、住民(檀家)一同で列をなしお迎えに行く場所もあります。

どこの家でもあえて迎え火は焚かないので、松明が迎え火の代わりなのだと思われます。

13日はご先祖様に、ゆうゆうとくつろいでいただきますので、決まったあげものはせず、ご先祖様と一緒に、お精進のご馳走をいただきます(現代なので、お精進ではなく、お刺身や肉、オードブルでテーブルを飾る家もあります)。

各日のメインとしては、

14日は、温麺(うーめん)汁、あるいは素麺でおもてなしをします。

15日は、お帰りの餅として、ずんだ餅納豆餅クルミ餅などでおもてなしをします。

16日は、かわりご飯(炊き込み、お蒸かしなどの白いご飯ではないもの)をあげます。

本来ですと、16日がお帰りなのだとは思いますが、東北地方のお盆は少し違います。

まだまだ続きます、二十日お盆、地蔵盆などなどいろんな名称のお盆の日があるのです。

仏さまも帰るに帰れないのです。

やっと帰れるのは、8月29日。

お墓まで送って行きます。

「なんならお彼岸までいていいよ」と声をかける家族もいますから、帰れないで滞在する仏さまもいます。

また、お寺側としても、厳密に29日ではなく、前後する土日曜日でも送りは構わないとおっしゃる和尚さんもおられます。

お盆の形態も、お帰りに関しては、現代調に合わせたものに変化しつつあるようです。

また、この旧盆の時は、国民大移動とも呼ばれ、実家に帰省する若者や家族連れが多いのも現状です。

しかし、この時に注意したいのは、会っていない時にも人は仏さまに近くなっているということです。

親も兄弟姉妹も老いているのです。

それが、実家で骨休めという気分で、お墓参りもしないどころか(仏さまはお家に帰ってきているので、まあ許されると思います)、仏壇に手を合わせもしない。

朝も寝たいだけ寝て、親やその家のお嫁さんに世話をさせて、挙句の果てには文句まで言っていく方もかなり増えました。

親に小遣いを渡すならまだしも、親からお金をせびっていく。

自分たちが滞在している際にかかっている費用は、お土産のおせんべいひと箱だったりもします。

帰省とは上げ禅据え膳の休暇ではありません。

それがしたいならば、帰郷しないことです。

帰るというのは、先祖を敬い、家族に礼を尽くし、逆に普段はできないことを手伝うのが本来の意味ではないでしょうか。

夏休みも、以前と違い旧盆ばかりではなく、前後8月いっぱいになっている会社も増えました。

29日までは自分たちより前に、仏様、ご先祖様がお帰りになっていることを充分に頭に入れて、仏さまを守っている人達に奉仕したいものです。

それが、今のとある東北地方の旧盆の現状です。