春のお餅

昨年クリスマスの翌日に、なんと「桜餅」が売られていました。

ハロウィンの翌日にスーパーには雛人形が飾られ、初売りの時には五月人形が飾られ、年々その速度を上げる「季節もの商戦」ですが、それでも「桜餅」はあり得ないと思いました。

「桜餅」そして「うぐいす餅」は、季節を少しだけ先取りして、もうすぐ春が来ますよと教える和菓子です。

どんなに早くても、立春を越えたころにちらほら出始め、ピークは「ひな祭り」です。

それから本州に本当に桜が咲く春分の日あたりから4月までには消えて、「柏餅」に代わっていきます(本来、ちゃんとした和菓子屋さんの「「柏餅」は、5月3日から5日までで期間限定で売られるものです~昨今は秋にも売っていますけど」。

桜餅は、地方によってその形態が違うようです。

元々は、関東から上は、ホットケーキ(クレープ)上に薄く焼いた生地で漉し餡を巻き、桜の葉っぱで包んだものです。

関西では、桜餅と言う名称よりは「道明寺」と呼ばれ、米粒の食感の残る道明寺粉で粒あんをお饅頭上に包み、桜の葉っぱが巻かれています。

現代では、土地の差がなくなり、関東風も道明寺も並行して売られていますね。

どちらの食感が好みかで、その家の「桜餅」が決まるというわけです。

蛇足ですが、「花びら餅」(菱花びら餅)という桜の葉っぱが巻かれていない和菓子も、「桜餅」として逸品に加えられることもあります。

しかし「花びら餅」は、元々は新年を祝う元旦のおせちの一つであり、現代においては、お茶会初めのお菓子という位置づけがありますので、どうぞ間違わないように、味わってください。

さて。

桜餅の葉っぱをあなたは食べますか、残しますか。

基本、消化を良くするためには食べた方がいいのです(ただし、1枚2枚程度)。

元々、生の桜の葉っぱには香りがありません。

塩漬けにすることで、香りが生まれるのです。

葉が柔らかいオオシマザクラが使われ、その70%が伊豆半島の松崎町で作られています。

お餅と一緒に食べることで、餡の風味も変わってきますので、食べず嫌いの人は、今年チャレンジしてみてください。

うぐいす餅は、求肥で餡を包み、楕円状にして左右にひっぱり、うぐいすの形に似せたお菓子です。

そして、うぐいす餅には「きな粉」がまぶされていますね。

このきな粉は、うぐいす粉(青大豆からできたきな粉=あおばたきな粉)と呼ばれるもので、形からだけでなく、きなこ自体も「うぐいす」に由来するものだったのです。

うぐいす餅は、朝に作られたら夕方には硬くなります(ちゃんとした和菓子屋さんのもの。スーパーのはそうでもないです)。

その日のうちに、おいしいうちに消費してほしいという考えからもきています。

そして、正式な食べ方は、一見お行儀が悪いように思われますが、一口で食べます。

きな粉を落とさないようにです。

「桜餅」と「うぐいす餅」は、早春を告げるお菓子です。

あなたが食べる前に、まず、仏さまにあげて、それからいただいてくださいね。

今年の暮れに、また、季節を間違った早春のお餅に出会いませんように。

なんでもかんでも急ぐより、季節に沿うのが、季節のお菓子の役割ですからね。

それが、四季のある日本と言う国の食べ物、と私は思います。