本門寺花峰のお線香~《沈香 長栄》
大半の樹木は、何らかの理由で表皮に傷がついた時には、自らを癒す樹液を出します。
「沈香」と呼ばれる樹木もまた、同じです。
ジンチョウゲ科の樹高の高い常緑樹の樹皮が菌に感染したり傷がついたりすると、それを治す樹液を出します。
この樹液が固まって樹脂となり、長い時間かけて胞子やバクテリアの力を借りて樹脂の成分を変質させ、独特の香りを放つまでに至ります。
つまり、普通の木より全体の比重が重いために『水に沈む』樹木となります。
これを『沈水香木』といいます。
これが『沈香』と呼ばれる香木であり、樹木なのです。
この元になる木は、大人の木になるまで、約20年かかり、沈香ができるまでには、さらに50年という時間を要します。
さらにさらに高品質の沈香になるには、100年から150年かかると言われています。
このような時間のかかり方をしていては、一人の研究者が一生を費やしても研究し尽くす事ができず、現在でもそのメカニズムには多くの謎があります。
樹木や樹液が環境の変化の中で、ある種の偶然性に左右されながら作られる香りです。
ですから、人工的に作り出そうとしても、それは大変難しいことなのです。
今、私たちがこの香りをかぐ事ができる沈香はとても貴重なものとされ、乱獲を防ぐために、ワシントン条約でその取引は厳しく制限されています。
そして、沈香の香りが極まったお香を『伽羅(きゃら)』と呼び、さらに細分化されています。
沈香になる木の幹や花、葉も通常は無香ですが、熱すると独特の芳香を放ちます。
ですから、沈香になる要素はあり、それが長い間時間をかけて、確固たる香りを作り出すとも言えます。
沈香は、産地によって『シャム沈香』、『タニ沈香』とに分類されます。
シャム沈香はインドシナ半島(タイやカンボジア、ベトナムなど)で産出される甘い香りのものです。
タニ沈香は、インドネシアの島々で産出される苦みばしった香りのものです。
これらの香りが、ほんのわずかで上品なお線香の香りとなるのです。
本門寺花峰のお線香、《沈香 長栄》は、この貴重な沈香を際立たせる調合をしております。
言葉では言い表すことのできないほどの奥深い芳香を、どうぞ店頭にてお確かめいただければと思います。