藪入り
「地獄の釜の蓋も開く」と言われる日「藪入り」は、年に2回あります。
1月16日と、7月16日です。
藪入りの意味としては、この日ぐらいはみんなで仕事を休もう、というものです。
この日は、地獄で門番たる鬼が、罪人を煮るための釜の蓋を開けて休んでいるのだから、生きてる人間も休んで良しと、閻魔様に許されたとされているのです。
昔は、商家で働く使用人は、住み込みが当たり前でした。
今のように定休日も就業時間も決まっていなく、朝日が昇ったら働き始め、夜月明りの下でもまだ働いていました。
それが当たり前ですから、今の言葉でいうブラック企業というのは通じません。
病気以外はほぼ無休です。
そんな使用人たちに「十王詣」または「藪入り」という名目で、実家に帰ることを許され、また一日中お休みすることも可能でした。
とある仏典によりますと、地獄には、いろんな釜があって、釜に入る罪を犯したものが、その中で長い間煮られると言う苦しみを与えられるようです。
本当に地獄があるかは、私たちが死んでみないとわかりませんが、地獄という死後の世界を作り上げて、悪いことを二度としないように戒めとして用いたと考えられます。
元々は、使用人が帰る日ではなく、嫁いだ娘が里帰りする日という説もあります。
旧暦の1月15日は小正月、旧暦の7月15日はお盆がありそれぞれ重要な祭日であったため、その行事を済ませたうえでのお休みとも考えられます。
藪入りの日には、主が使用人たちに、お仕着せの着物や履物を与え、小遣いも与え、手土産も持たせ、実家に送り出しました。
しかし、遠方から出てきた者やもう実家とも縁の薄い年長者たちは、実家へは帰らず芝居見物や買い物を楽しんだとのこと。
時代は明治維新で大きく変わりましたが、使用人が藪入りに休むと言う習慣は長く続いていました。
しかし、第二次世界大戦後に労働基準法が強化され、労働スタイルもかわり欧米化して、日曜日が主な休日となりました。
1月の藪入りは、年末年始の正月休みに、7月の藪入りは盆の帰省に吸収されて行われるようになったという次第です。
なお、みんな休むので、産婆さん(産婦人科)でも陣痛が来ても「明日(17日)まで我慢できないだろうか」と言われたりして、特に1月16日生まれの人は珍しいと、昭和30年当初までは言われていたそうです。