さわやかな香りのお線香「爽風」

さて、本日のお線香は、玉和堂さんの、「爽風」をご紹介させていただきます。

火を燈すと、最初はとても懐かしい香りがします。

そう、子供のころ(筆者の世代)に誰しもが夏に体中にはたいてもらったシッカロール、天花粉のやさしい香りがします。

古くは「お香」に代表されるような漢方薬系の香り、最近では爽やかなハーブやポプリの香りです(ポプリとは、花や葉、香草や香辛料、木の実や果物の皮などを精油やポプリオイルなどの香料と混ぜ合わせ容器に入れて香りを楽しむものです)。

どれもこれも違う香りをしているように感じるのも、また人間の嗅覚といったものですが、漢方薬とハーブ、ポプリは実は基本的に同じ系統の香料として、薬として、使われていたりします。

この爽風は、それらの中から、特に爽やかな香り、清々しい香り、淡い香りの香料を選び出して、調香されています。

1本がとぼれるまで約30分ほどかかります。

10分を過ぎたころから、シッカロールの匂いに変化があらわれます。

あっさりした緑茶、いや、紅茶に近い香りにどんどん変わります。

そう、紅茶のアールグレイの香りまでに変化していくのです。

日曜日の昼下がりに、木漏れ日が入る窓のそばで読書をしているときは、コーヒーではなく、紅茶。

アールグレイのストレートが似合うと思いませんか。

本を読み、空想に思いを巡らせながら、時々紅茶を口に含ませる。実にゆったりした、日々のストレスなど消えてしまう時間に合う香りですよね。

西洋には基本お仏壇のようなものはありません。

ですから、お線香の代わりが、ハーブやポプリなのです。

西洋の人もまた、休養日である日曜日の午後は、本を読みながら、あるいは音楽を聴きながら紅茶の香りを嗅いでいるのかもしれません。

そこに、ポプリの香りが自然に混ざり合います。

シッカロールと紅茶は似て非なるものかもしれません。

でも、お互いに、爽やかですっきりすることは共通のものです。

シッカロールの原料となるオオカラスウリも解熱や消腫効果のある漢方ですし、アールグレイの元々の原料は、龍眼であり、疲労や不眠、胃腸症状の緩和に使われる漢方なのです。

アールグレイが想像つきがたい方は、喫茶店でアイスコーヒーと言って出される飲み物の香りを連想してみてください。

爽風を炊くことによって、すっきりとした空間が広がります。



池上本門寺 花峰 - 爽風 小バラ