シリーズ~お墓は誰が継ぐ? その3

とあるお宅が、お墓の改葬をしました。

今の時代、墓じまいや改葬自体、さほど珍しいことではありません。

しかし、これはとても切実で、必要に迫られ、やむなく40年越しで改葬に踏み切られたケースです。

それは、親子二代に渡る改葬でした。

前回お葬式があったのは、昭和35年のことで、その地域では、まだ土葬も火葬も両立していたころです。

喪主になったのは、18歳の娘さん(このお宅におけるお母さん)であり、どっちで埋めたのか記憶にないということでした。

周囲の親族も高齢になり、記憶が薄れ真実はわからないままでした。

この娘さんが、25歳でお婿さんを取り、ずっとお墓を守っていました。

この地域では、女性と子供は、骨=埋葬を見てはならないというしきたりでしたので、悲しみもあり記憶にないのも致し方ない状態でした。

しかし、娘さんはお母さんになり、子供たちも結婚し孫もできて、気が付けば70歳になっていました。

52年間お葬式が出なかったのは幸運でしたが、本当に気が付けば、自分や夫が入ることになり、このままでは埋葬のときに、土葬の骨が出てきたら納骨が進まない。

それで、息子と折半で改葬に踏み切ったわけです。

娘さんというかお母さんは安心しました。

しかし、別の問題が残りました。

息子が一人娘と結婚して、マスオさん状態で住んでいたのです。

お嫁さんの両親も初代でお墓がありません。

息子は、そのお墓に、お嫁さんの両親も入れる決意でいました。

しかし。

息子の妹が離婚して出戻ってきていたのです。

妹にも息子が二人いて、旧姓に戻っていました。

息子と娘、兄と妹。姓は同じなので、将来的には「お嫁さんの両親も、妹親子も入ればいいさ」とお母さんは言いました。

でも、お墓の半額を出して、半分の所有権のある息子は、「うちにも息子がいるから、妹親子は入れない」と宣言しました。

一つの姓のもと、〇〇家の墓のもと、嫁の両親は入れるのか。

同じ姓であり、同じ両親から生まれた妹がなぜ入れないのか。

このお墓は、いったい誰のものなのか。

このお墓は、誰のために建立したのか。

ほどなくして、お墓を建てましたが、10か月目にお父さんが亡くなりました。

次に入るのは誰なのか、入れる権利があるのは誰なのか、答えは先送りのままとなってしまっているのです。

何とも考えさせられる改葬のお話であります。