禊萩(みそはぎ)
禊萩(みそはぎ)の季節になりました。
禊萩(みそはぎ)と言うと、感傷的に思い出す子供の頃の個人的な思い出があります。
それは、今では原発が爆発して閉鎖されてしまった福島県のある湖のキャンプ場に大量に咲いていた禊萩(みそはぎ)の群生の風景です。
このキャンプ場のある湖は高原に位置していて、お盆の時期でも夜には寒さに身を縮めるほどの場所なのですが、その分空気が美しく、湖もどこまでも青く清浄に澄んでいて、深い湖底に沈んだ流木が白い骨の様に見えました。
それほどの透明度をほこる水には、たくさんの生き物が泳いでいて、時々巨大な魚影がボートの下を横切り、ちょっとぞーーとしたりしながらも、一日中船をこいだり、泳いだり、もぐったり、釣りをしたりして過ごしました。
夜にはキャンプ場にテントを張りワイワイしながらキャンプファイヤーを囲み手作りの素朴な料理に舌鼓をうちました。
そんな福島のキャンプ場には、夢の中の様に本当に美しい、たくさんの禊萩 (みそはぎ)が咲いていました。
子供心にも、こんなに美しい景色が現実に存在することに妙な感動を覚えたものです。
しかし今ではそのキャンプ場も閉鎖されました。
丁度、震災の前年の夏にこのキャンプ場を友人が訪れて「今年はおかしい、禊萩 (みそはぎ)に一本の花もついていなかった」と言っていました。
キャンプ場の名物おばあちゃんもこんなことは初めてのことだと言っていたそうです。
まるで翌年の大地震を予知していた様で、自然の不思議さを感じました。
遠いかの地に今年も禊萩 (みそはぎ)は咲いたんだろうか、最近そんなことばかりが気になります。
ちなみに、「みそはぎ」の名前の由来は「みそぎはぎ」を略したもので、「みそぎ」は水を注いで悪魔を払うこと、萩はお盆を指しています。